Thursday, June 4, 2009

ディレクター視点で見たオープンソースCMS利用の心得

クライアントから見たオープンソースCMSとは?

最近僕の会社でもオープンソースCMSを使ったプロジェクトを手がけています。普段はパッケージソフトを使うことが多いのですが、これまで手がけた案件では、クライアントの要望でぜひオープンソースを使いたいというニーズから利用しているケースが多くなっています。実際に中規模のものでは機能的にパッケージソフトのレベルと同等か、それ以上のものもあります。

では、どういうケースでクライアントからオープンソースの要望が出るのでしょうか?
  • 開発費用を抑えたい(ログイン機能やフォーラム機能などの実装)
  • 運用費用を抑えたい(ソフトウェアのライセンスコストを抑えたい)
  • 英語環境で利用したい(多言語対応したい)
  • 自社で今後カスタマイズしていきたい
費用を抑えたいというご要望が最も多いのが確かですが、費用も大きく2つに分けて開発費、運用費の2つありますが、開発費についてはケースバイケースですが、カスタマイズをあまり考えず機能を実装するということを優先すればエクステンションを無料で利用出来るオープンソースの方がコストを落とせると言えます。また、今回は運用費としていますがライセンスコストはまさに0円ですから、分かりやすくコストを落とせるポイントです。
これらはまさにオープンソースのメリットとも言えますが、開発を行う場合にはここが落とし穴となってプロジェクトが難航するケースもあります。それについては後ほど。

次に最近のケースとして多いのは、海外クライアントから英語環境で利用したいという要望です。
パッケージソフトは大規模なものは複数の言語対応がなされていますが、中規模、小規模のものは日本語のUIのみというものも少なくありません。オープンソースは基本的に海外で開発されたソフトが多いため、英語を含めた複数の言語のインターフェースを持っていることがメリットです。また、構築したサイトにおいてもマルチリンガルマネージャーなどがエクステンションなどで利用可能で、各国の言語ファイルが既に用意されているため、グローバル対応サイトの構築が容易であることがメリットではないでしょうか。

選定段階における注意点:クライアントへの説明責任と理解を得る大切さ

次に実際のプロジェクトとしてオープンソースを利用するケースを考え、ディレクターとして注意すべき点について触れたいとおもいます。
今後は開発側の提案として費用や期間、機能面などからオープンソースを提案していくことも増えていくと考えられます。実際に、ログイン機能やコミュニケーション機能などを持ったサイトの構築や、多言語言語展開するサイトではオープンソースCMSを使うことで期間、費用、開発難易度などが押さえられるケースも多いと思います。

では、オープンソースを利用する場合ディレクターはどのような点をパッケージ利用時と違い注意すべきでしょう?

まず、選定段階における注意点です。
僕は大きく2つ、クライアントへの説明責任とクライアントの理解を得ることだと考えています。

メーカーやベンダーから情報を得られるパッケージソフトですらクライアントはどのパッケージにするかをかなり悩まれます。オープンソースはまだまだ情報が不足している状態ですし、特に海外ソフトは日本での事例が少ないということもあり、パッケージソフト以上にクライアントは情報を得ることが難しくなります。
確かにライセンスコストがかからないというメリットはありますが、ビジネスで利用するサイトの構築においてクライアントが納得出来る信頼性があるかどうかをしっかり説明する必要があるでしょう。その中でも、以下のポイントは押さえておきたいところです。

  • アップデートへの対応:オープンソースは頻繁にアップデートされるためその対応をどうするのか(これはベースのソフトとエクステンション両方に発生します)
  • バージョンアップ、拡張機能対応:開発タイミングで既に次のバージョンが予定されていたり、拡張機能の導入を今後検討している場合、その対応をどうするか
  • サポート契約:メーカーサポートが無いため、期間や内容など保証をどう設定するか

開発側としてもオープンソースはタダでお得ですよというのは確かに売りに繋がるポイントですが、逆にサポートが自社責任になるという点もしっかり理解しておくべきでしょう。

また、理解を得るというポイントは、クライアントにオープンソースを利用するという意味をしっかり認識してもらうということです。上記の通り、オープンソースを使うことはメリットもある反面デメリットも生じます。クライアントはパッケージソフトを使っている時と同じ保証を求め、そのデメリットを開発側だけで吸収してしまうような関係性になってしまうと、リスクばかりが増し、もはやオープンソースを使うメリットが無くなってしまう可能性もあります。

ですので、オープンソースとしてこういったメリットが安価に得られることの代償に、こういった部分はパッケージと異なります、こういった使い方をしていきましょうということをしっかり事前に共有し理解いただく関係性の構築が大切です。そのあたりは次の開発段階における注意点でも触れていきます。

設計、開発段階における注意点

さて、では実際に開発に入ったときの注意点を見ていきましょう。

  • Scope定義
  • 機能設計とワークフロー設計
  • エンジニアのコミュニケーションスキル

自社で既に使い慣れているオープンソースであれば良いのですが、新しいソフトや新しいエクステンションの利用にあたっては様々な注意点が必要です。


Scopeの設定
パッケージと違いオープンソースはエクステンションと呼ばれる追加プログラムでどんどん拡張が可能ですし、そもそもベースのプログラムすらオープンソースですから変更が可能です。かといってプロジェクト設計時になんでも出来ますよでは、開発期間、コストともにかなりふくらんでしまい、結果的にスクラッチレベルのコストがかかってしまうなんてことも起こりえません。オープンソースを使っているにはそれなりに前提条件に制約があるはずです。要件定義の段階からその前提条件をしっかりと押さえたコミュニケーションを心がけScope設定していきましょう。


機能設計とワークフロー設計
オープンソースはパッケージソフトと違いエクステンション(プラグイン)などの拡張機能が豊富です。Joomla!やWorPress, Drupalなどはコミュニティがとても賑わっており、エクステンションの数もかなり膨大です。これがオープンソースを利用するメリットでもありますが、その反面どれが信用出来るものなのかという選定がとても難しくなってきます。実際に構築しようとすると各エクステンションの制限や、連携問題、クセなどが分かってきてなかなか上手くマージ出来ないという問題も出てきます。UIにおいてもエクステンション毎にメニューの場所や使い方が異なるものもあるため、機能設計とワークフロー設計はある程度期間をとり、一つの機能に複数候補のエクステンションを用意しながら機能を検討し、設計段階である程度柔軟性と選択肢を持った設計をクライアントと共有し進めていくことをオススメします。

ただ、僕はオープンソースだからこそ、モジュールの組み合わせを楽しむという姿勢を持ち、機能を取捨選択することが大事になってくると思います。つまり、エクステンションレベルでのカスタマイズは極力行わず基本的にデフォルト機能のまま利用し、それらをどのように組み合わせ使いやすい環境を構築するかに注力すべきだと思っています。このあたりの姿勢についてもクライアントと共有出来ていればとてもスムーズな開発が可能でしょう。


エンジニアのコミュニケーションスキル

先に述べたように、オープンソースでは情報が得づらく、実際に構築してみないと分からない点も多くあります。それらに対応していくにはエンジニアが如何にそれらのノウハウを取得していくかがポイントとなってきます。最近は随分と本などでも紹介されていますが、基本的にはWeb上のコミュニティやblogから情報を得ていくという方法が主流となります。しかしながら、海外製のソフトであれば、そのほとんどが英語になってきますし、開発者に直接問い合わせるといった方法も必要になってきます。これはエンジニアの探求心とコミュニケーションスキルが問われるポイントでもあります。また、ディレクターとのコミュニケーションにおいても、ある程度自ら提案していき実現方法を提案していかないと、多くの情報と選択肢に埋もれてしまうことにもなってしまいますのでご注意を。

最後に
さて、オープンソースCMS利用にあたっての心得について書いてきましたが、すこしでもディレクターの皆さんの参考になりましたでしょうか?具体的な各ソフトの機能や特徴については、ちょっと記事が古めですがWeb担当者フォーラムさんにいい記事がありますのでそちらをご覧ください。

企業で使えるオープンソースCMS一挙12種類解説

オープンソースCMSは世界でも開発が盛んですし、日本でも島根県CMSなどが登場するなど主流になってくるでしょう。また最近ではほとんどの作業をフロントエンドから行えたり、Ajaxを取り入れて感覚的な操作を実現するなど面白いソフトが沢山出てきている楽しみな分野でもあります。UsabilityやUIの視点からもWebサービスと同様に注目しておくべきではないでしょうか。オープンソースCMSのほとんどが、オンラインデモが利用出来、実際に管理画面などを見て触れられるものが多いのもメリットです。Open Source CMS Awardなどをチェックしてみると、受賞は出来なかったものの面白いものが沢山ありますよ。

Open Source CMS Award

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